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出版社 / 著者からの内容紹介
『 蒼穹の昴 』 に続く清朝宮廷ミステリー・ロマン!
誰が珍妃(ちんぴ)を殺したか?
愛が大地を被い、慟哭が天を揺るがす ── 荒れ果てた東洋の都で、
王権の未来を賭けた謎ときが始まる。
列強の軍隊に制圧され、荒廃した北京。
ひとりの美しい妃が紫禁城内で命を落とした。
4年前の戊戌(ぼじゅつ)の政変に破れ、幽閉された皇帝・光緒帝の愛妃、珍妃。
事件の調査に乗り出した英・独・日・露の4人の貴族たちを待っていた
「 美しい罠 」 とは?
降りしきる黄砂のなかで明らかになる、強く、悲しい愛の結末。
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『 蒼穹の昴 』 の広告に、『 蒼穹の昴 』 ⇒ 『 珍妃の井戸 』 ⇒ 『 中原の虹 』 がシリーズ化されていて、互いに続編であるかのように紹介されていたので、買ってしまった本です。
しかし、『 珍妃の井戸 』 は 『 蒼穹の昴 』 の続編ではありませんでした。
時代としては、『 蒼穹の昴 』 の最後であった戊戌(ぼじゅつ)の政変の4年後 ( 義和団の乱の2年後 ) に当たり、確かに 『 蒼穹の昴 』 に続いているのでしょうが、内容的には全くの別物で、『 蒼穹の昴 』 を引き継いでいる要素はありません。
ただ、物語の中の7人の証言者の証言の中に、春児や西太后、光緒帝、珍妃、等々のその後が見え隠れしますので、「 ああ、あの後、春児や西太后にこんなことが起きていたんだな!」 という後日談のようなものは窺い知れるでしょう。
本当の続編は 『 中原の虹 』 になるようですが ・・・。
さて、『 珍妃の井戸 』 そのものの内容ですが、これは義和団事件の混乱の中、西太后に殺されたとされる、光緒皇帝が寵愛した珍妃の死の謎を追う、4人の外国人貴族たちと、7人の証言から成っています。
7人の証言は、それぞれの思惑から、少しずつ違っており、殺人の実行者すらバラバラの人物を挙げる始末。
丁度、黒澤映画の 『 羅生門 』 のような感じですね。
『 珍妃の井戸 』 では、最後の証言者、光緒帝の証言を以って正解として終えていますが、はっきり言って矛盾に満ちた結論です。
そんなのが正解なら、何故4人の外国人貴族が敢えて犯人探しをしたのだろうという疑問が残ってしまいました。
いずれにしても、『 珍妃の井戸 』 は、前作の 『 蒼穹の昴 』 の壮大な物語に比べると、矢鱈見劣りする作品だと言わざるを得ないでしょう。
『 蒼穹の昴 』 を読んだ後で、ワクワクしながら、その続編だと思って 『 珍妃の井戸 』 に手を出すと、失望すると思います。
ですが、かといって、『 蒼穹の昴 』 を読まないまま、『 珍妃の井戸 』 を読んだ場合、殆どの出演者が 『 蒼穹の昴 』 とダブっているだけに、何が何だか分らない物語となってしまうとも思います。
結局、『 珍妃の井戸 』 は、前作の 『 蒼穹の昴 』、後編の 『 中原の虹 』 の外伝だと思って、息抜きのつもりで読むのが正しい読み方かも知れません。
そう思って読めば、そう、悪い作品と言うわけでもないと思いました。
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