( ↑ 作品の詳細を見るだけのときには、タイトル又はイメージをクリックして下さい。)
出版 / 著者からの内容紹介
新生面をひらく特別書下ろし超大作!
この物語を書くために私は作家になった。―― 浅田次郎
汝は必ずや西太后の財宝をことごとく手中におさむるであろう ──。
中国清朝末期、貧しい農民の少年・春児(チュンル)は占い師の予言を信じて宦官に
なろうと決心した。
■■□―――――――――――――――――――□■■
好。太好了! ・・・ です。
非常に面白い歴史超大作に仕上がっており、時の立つのも忘れて、上下巻とも一気に読破してしまいました。
現在、NHK で放映されているドラマの原作という事になっていますが、ストーリーは完全に別物です。
・・・ というか、出てくる人物の名前以外、殆ど共通点が見当たりません。
本を読み終えてからドラマを見ているので、良くぞここまで、ストーリーから人間関係まで変えて、蒼穹の昴のドラマ化だなどと言えたものだと、妙な感心の仕方をしてしまいました。
ドラマを見て、つまらないと感じた方にも是非お勧めの小説です。
物語の展開が、非常にワクワクと興味深いので、ストーリーに関してはここで触れたくありませんが、余りにもドラマと違っているので、その点だけ少し書いておきます。
そもそも、ドラマの場合、ストーリー自体が全く違い、一つ一つのエピソードも原作に無い場面ばかりで、違いを並べ立てれば一冊の本になってしまいそうですので、大きな点だけ挙げておきますね。
先ず、気になるのは、ドラマで義兄弟という事にされてしまった、春児(チュンル)と梁文秀ですが、小説では赤の他人であり、春児の子供時代に暫く関わったという以外には余り交流も無いままに物語が展開していきます。
重要な場面で時たま関わり合うのですが、だからこそその場面が貴重なものとなっていることを考えると、ドラマで二人が常に連絡を取り合っているというのが、気に入りません。
それに、ドラマを全く面白くないものにしているミセス・チャンの存在ですが、この女性はヒロインでも何でもなく、原作では最後の方に、梁文秀の逃亡 ( 日本への亡命 ) に手を貸す人物として登場します。
その一点をとっても、ドラマの各回のエピソードが全く独自なものであることが分ると思いますが、春児の妹、玲玲とか、梁文秀の妻も原作では殆ど活躍しない人物なのです。
ついでにいうと、西太后もドラマほどには出ずっぱりに登場したりしませんし、珍妃に至っては一行ほどの記述しかありません。
それらの女性陣が延々画面に出ずっぱりにでしゃばって、何だか安っぽいホームドラマのようになってしまっているのですが、原作がもっと骨太の大河小説である事を考えると、つくづく邪魔だと感じます。
要するに原作は、春児と梁文秀という二人の人物が各々自力で将来を切り開いて行き、お互いある程度まで昇り詰めた時期に大きな歴史の波 ( 戊戌の政変のことですが ) に飲み込まれて行き、その中で時々出遭っては運命を交差させる ・・・ というような趣きなのです。
その部分が主人公達の運命の大きな転換期に当たるからこそ面白いのだと、わたしは思います。
だのに、TVドラマでは、そういう出会いの妙が全く失われ、登場人物が常にワイワイと一緒に騒いでいるだけという描かれ方になっており、全くの興醒め状態なのです。
原作がこれほど面白いのに、あんな詰まらないホームドラマになって世に知られてしまうとは、本当に驚きました。
誠に残念なことだと思います。
―――――――――――――― 本文はここまでです ――――――――――――――