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【内容紹介】
これは、精神病にかかったお母さんを持つ、著者の実話を描いたコミックエッセイです。
近年、「 うつ 」 という言葉が一般に浸透したことで、実は、とても多くの人が心の病気で悩んでいるということが明らかになりました。
著者のお母さんもその一人 ・・・。
ただし、診断の結果は 「 うつ 」 ではなく、うつに次いで多い 「 統合失調症 ( トーシツ ) 」 です。
昔は 「 精神分裂病 」 と言われていたこの病気、なんと100人に1人の割合で発症しています。これはがん患者と同じ割合です。
でも、どうしてあんまり聞いたことがないのでしょうか。
その裏には家族のやりきれない想いがあったのです ・・・。
本書では 「 統合失調症 」 とはどんな病気なのか、どうやって回復するのか、どんな思いを抱いているのか、そして当事者とどう関わっていけばいいのかを家族の視点から描きました。
また、看病されるお母さんと看病する娘の、心と心のぶつかり合い、通じ合いを深く鮮明に描いた作品にもなっています。
「 ときにはイヤになるけれど、今では幸せな生活を送っています 」。
そんな著者の姿が、間違いなく胸を打つ一冊です。
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コミカルなタッチで描かれ、簡単に読める漫画本 ・・・ うわべだけをひと言で言ってしまえば、そんな感じです。
しかし、内容的には重たいものがあり、笑い飛ばして描かれる部分にも、悲惨なエピソードの多い一冊でもあります。
母親の発病は、著者4歳の時。
しかも、父親はギャンブルに狂って家にも寄り付きません。
当初、異様な言行の出始めた母親に振り回されるだけだった著者も、小学生になった頃には否応無く対処方法を身に付け、包丁と現金を隠して回っていたようですが、そんな陰惨な状況も、あっさりと 「 隠すのに忙しい小学生になった 」 とだけ解説してあったりします。
全てがそんな調子で、面白可笑しく語られているのですが、それらの表現が一々、実は重い意味を持っているのです。
著者の言うように、著者が結婚して、母親の病状が快方に向かってからの著作だから出来たのかも知れませんが、それにしても、小学生が包丁を振り回す母親をたった一人で看病する姿には、何と表現されようと、痛々しいものがありました。
ところで、著者は、自身の結婚を機会に生活が変わったと解説しています。
能天気で寛大な夫、タキさんが来て、生活が一変したと考えているようです。
小学生の時から、独りで病気と取り組んできた著者には、支えてくれる人が現れたのがよくよく嬉しくて、そういう感想になったのだと思いますが、第三者の目で全体を見ていると、事態の好転はもう少し早い時期 ―― つまり、著者が引越しをして東京に移り住んだ頃 ―― に起きているようです。
東京に越して来て、地域生活支援センターに通い出したころから、著者も、病気の母親も様子が変わり始めます。
それまで統合失調症の患者を殆ど自身の母親しか見掛けなかったものが、東京で沢山の患者と交流し、支援センターのスタッフに母娘共々支えられるようになって、初めて著者が一息吐けたように見えるのです。
そんなことからも、精神病というものは周りの環境に大きく左右されるものだと感じました。
母親はデイケアに通い始めて、友達を作り、娘はスタッフとの交流で精神的に後押しされる ・・・ そうやって徐々に快方に向かう姿が浮かび上がって来るのです。
そして、病状の少し安定した母親に薦められて結婚。
先に述べたように、自身を支えてくれる存在が現れます。
読んでいると、可哀想に! ・・・ だけでなく、地域社会との繋がりの大切さも伝わってくる内容でした。
それにしても、時々何もかも嫌になって、全てを投げ出してしまいたくなる著者を思い留まらせ続けてきたのが、病状が出る前の母親の言葉、「 お母ちゃん、ユキを産んだときが生まれて一番幸せだったのよ 」 だったのには、羨ましさを感じました。
やっぱり、子供としては、「 お前さえ産まれて来なかったら、わたしはもっとずっと幸せになれていたんだから!」 と、言われ続けてきた母親の面倒は、特に困難な場面では、看きれませんよね!!
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