親安倍派議員多用の組閣、中川幹事長が 「 プロデューサー 」 に
(ロイター) 2006年 9月26日 (火) 22:18
[東京 26日 ロイター] 26日に発足した安倍内閣は、
表面上は派閥の均衡に目配りしたかにみえるものの、実質的には
「 安倍派 」 と言える安倍首相に近い政治家を多用し、
小泉前首相以上に派閥を無視した人事を断行したと言える。
注目の経済閣僚では、財務相に 「 本命 」 とみられていた
与謝野馨前経済財政・金融担当相ではなく同じ森派の尾身幸次
元経企庁長官を起用。
経済財政担当相には竹中平蔵前総務相に近い大田弘子氏を充て、
自民党の中川秀直幹事長の持論でもある成長重視の
「 上げ潮政策 」 を進めやすい布陣を敷いた。
実質的に主要な政策を中川幹事長が 「 プロデューサー 」 として
コントロールする体制になったとの声が金融・資本市場から出ている。
「 首相官邸に来ていただきたい 」 ── 。
26日午後3時ごろ、総裁選での安倍選挙対策本部の事務局長を
務めた甘利明・前政調会長代理 ( 山崎派 ) の携帯電話に
安倍首相から直接連絡が入り、そこで入閣を告げられた。
ポストは明らかにされなかったが、その後首相秘書官 ( 経済産業省
からの出向 ) からの連絡で、経済成長戦略に重要な役割を果たす
経済産業相ポストと分かったという。
一方、津島派が推していた佐田玄一郎・前議員運営委員長の初入閣
を告げる連絡は 「 男性の声で 」 ( 秘書 ) 議員事務所に入った。
安倍氏に近いかどうかはこうした連絡方法の違いに表れている、
と自民党関係者はみている。
新内閣の顔ぶれを見ると、安倍首相を支えてきた議員が目立つ。
例えば、選対本部長だった柳沢伯夫・元金融担当相 ( 丹羽・古賀派 )
を厚生労働相、「 再チャレンジ支援議員連盟 」 会長の山本有二氏を
再チャレンジ・金融担当相に任命。
世耕弘成参院議員を新設の首相補佐官 ( 広報担当 ) に抜てきした。
佐田氏も派閥推薦議員で構成した選対本部で政策担当という
役割だったが、実際に政策をまとめたのは、安倍官房長官の下で
補佐してきた長勢甚遠・前官房副長官で、長勢氏は今回の人事で
法相となった。
安倍内閣の閣僚の中で、公明党の冬柴鉄三国土交通相と
参院の推薦枠の2人を除くと、安倍首相との距離が比較的遠く、
いわゆる 「 安倍ファミリー 」 的な色彩が薄いのは、
伊吹派会長の伊吹文明文部科学相や津島派の久間章生
防衛庁長官ら少数にとどまる。
米国の政界に詳しいある外資系証券の関係者は 「 米国では、
大統領が代われば閣僚だけでなく主要なスタッフは総入れ替えに
なり、大統領の人脈で主要なポストは独占される。
ブッシュ政権では、テキサス人脈が主流だ。
安倍内閣をみていると、その米国流に似ていると感じる 」 と話す。
マーケットが注目する経済閣僚では、与謝野氏が閣外に
去ったことが予想外の展開と受け止められている。
ある邦銀関係者は 「 与謝野氏が入閣せず、誰がマクロ政策の
責任者になるのか。尾身財務相で果たして経済政策を
仕切れるのか不安だ 」 と懸念を示した。
日銀との関係で、新たな展開を予想する見方も出ている。
クレディ・スイス証券のストラテジスト、市川眞一氏は
「 与謝野氏がおらず、日銀に金融緩和を求めていくようなシフトと
みることができる 」 と予測する。
日銀にとっては 「 理解者 」 を失った人事で、頼みの綱は
日銀出身の塩崎官房長官だけとなる。
市川氏は、さらに柳沢厚生労働相について 「 旧大蔵省出身、
党税調会長の歴任というキャリアから、注目される社会保障政策は
財政寄りのスタンスを取ると思われ、全体としても新政権は
緊縮財政を意識していると感じさせる 」 と指摘している。
大田経済財政担当相は、キャリアからすれば問題はないが、
やや線が細い印象で、経済政策に関しては 「 党高政低 」 で
運営されるようになるとの感想を抱いたという。
だが、中川幹事長が経済政策の大枠を統括すると考えると、
今回の閣僚の顔ぶれも理解できる。
尾身財務相は中川幹事長と同じ森派に属し、気脈は通じ合っている。
財務省の事務方の思惑通りに動いた谷垣禎一・前財務相と異なり、
消費税引き上げの動きに歯止めをかけ、成長重視路線の
中川幹事長の路線を支援する展開が予想される。
同様に民間から転じた大田経済財政担当相も、中川幹事長の
シナリオに沿って成長重視の政策を経済財政諮問会議に諮ると
いうことが展望できる。
さらに財務省に旧通産省出身の尾身氏、厚生労働省に
旧大蔵省出身の柳沢氏を配置することで、官僚の言いなりに
ならない安倍政権のイメージを打ち出すことができるという
戦略もみえる。
上げ潮戦略は、財務省の財政健全化の政策手順とは明らかに
手法がことなるだけに、中川幹事長が自民党だけでなく内閣の
主要な政策を主導していく姿が浮かんできた。
今後は、霞が関の抵抗をどのように抑えつつ、政策目標を
達成していくのか、安倍首相と中川幹事長の力量が
問われることになる。
新内閣の顔ぶれは次の通り(敬称略)
総理 安倍晋三(無派閥)
総務・郵政民営化 菅義偉(丹羽・古賀派)
法務 長勢甚遠(森派)
外務 麻生太郎(河野グループ)
財務 尾身幸次(森派)
文部科学 伊吹文明(伊吹派)
厚生労働 柳沢伯夫(丹羽・古賀派)
農林水産 松岡利勝(伊吹派)
経済産業 甘利明(山崎派)
国土交通 冬柴鉄三(公明党)
環境 若林正俊(森派)
官房・拉致 塩崎恭久(丹羽・古賀派)
国家公安 溝手顕正(丹羽・古賀派)
防衛 久間章生(津島派)
沖縄・北方 高市早苗(森派)
金融・再チャレンジ 山本有二(高村派)
経済財政 大田弘子(民間)
行政改革 佐田玄一郎(津島派)
経済閣僚は商工族中心の「成長戦略」シフト、増税色を排除
(ロイター) 2006年 9月26日 (火) 20:26
[東京 26日 ロイター] 安倍晋三新内閣の経済閣僚は、
商工族中心の 「 成長戦略 」 シフトとなった。
安倍─中川ラインの政策主導が色濃く出た布陣で、財政健全化を
にらんだ将来の増税論議は完全に棚上げされてしまった。
「 商工族だけは ( 勘弁 ) 」 ── としていた財務省のため息が
聞こえる布陣となった。
経済政策の要となる財務相には商工族のドンで森派の先輩格である
尾身幸次氏が、また成長戦略の具体化を担う経済産業相にも
商工族の甘利明氏が就任することとなった。
経済財政担当相には民間から大田弘子氏が就くが、官邸主導の
政策決定強化のためにフル活用される首相補佐官・経済財政担当
に根本匠氏が就く。
根本氏は 安倍首相や塩崎恭久新官房長官、
石原伸晃・自民党幹事長代理らと政策集団を結成していた仲間で、
首相補佐官の立場で政策を進言していくことになる。
「 政治家の使命 」 として歳出歳入一体改革に取り組んだ
与謝野経済財政担当相は無役に転じ、消費税を含む抜本税制改正を
主導してきた自民党税制調査会の中心的メンバーを閣内に取り込んだ。
党税調会長の柳沢伯夫氏は厚生労働相に、党税調小委員長の
伊吹文明氏は文部科学相にそれぞれ就く。
尾身氏は閣僚名簿発表後の記者会見で、消費税引き上げ議論は、
2006年度の決算、2007年度の予算の状況、社会保障の状況を
みながら考えていくとし 「 本格的な議論は来年の秋以降になる 」 と
述べて、安倍首相が自民党総裁選で表明してきた方針を踏襲し、
前任の谷垣路線からの転換を明確にした。
政策減税と財源問題に関しても、政策減税によって経済が
活性化することで 「 税収がプラスになる 」 と持論を展開している。
一方、経済財政諮問会議を担当する大田弘子氏は、
政策課題として、歳出改革の工程表作りと経済成長戦略の具体化の
2つを挙げ、安倍氏の政権公約である 「 成長なくして日本の未来は
ない 」 の具体化を急ぐ。
経済閣僚の人選は、増税色を出さすに経済成長路線を進める
「 安倍カラー 」 を打ち出した形で、「 歳出・歳入一体改革 」 は
「 今や一体ではなくなった 」 ( 政府筋 ) との声も。
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( これを書いたのが、26日の夜であったため、その時点では、 )
まだ何の政策も行われておらず、それに付いての感想が無く、
組閣人事といった、政治家そのものの話は、得意でもなければ、
興味も無い ・・・ といったところです。
まぁ、流行りモノとして ( え?)、分かる範囲でちょっとだけ ・・・。
新内閣の経済閣僚の面子を見ると、ロイターのいうように、
商工族中心の 「 成長戦略 」 シフトとなったようです。
是非とも、官邸主導の予算、税制、行革等の政策決定プロセスに
持ち込みたいってことですね。^^
悪くないと思うんだけどなぁ ・・・?
90年8月の湾岸戦争勃発を契機とした景気低迷 ( 双子の赤字 )
期から始まった、クリントン政権 ( 1993 − 2001 ) だって、
アメリカ史上最大の景気拡大、株価上昇を記録し、失業率も
インフレ率も低下する 「 繁栄の90年代 」 を実現しましたが、
その施策は、I T 革命に代表される技術革新や、金融・投資・
貿易面でのグローバリゼーションの推進、インフラ整備、
規制緩和など、民間、或いは中小企業と強く関わった経済拡大策
でした。
( まぁ、後に 「 根拠無き熱狂 」 と名付けられもしましたが^^ )
強気の経済政策で不況からも脱出し、何よりも米国そのものが
自信を取り戻した時期であったという気がして、こうした政策には、
悪いイメージは持ちません。
( っていうか、おかしな期待感も多少 ・・・。)
民間登用で新顔の大田弘子氏については、少し書いておきますと、
経歴などは官邸ホームページ ( http://www.kantei.go.jp/ )
に出ている通りです。この人は、このところの活躍で言うなら、
経済財政諮問会議の事務方の一員という立場から、
それについての本、経済財政諮問会議の戦い ( 東洋経済新報社 )
を書いた人というイメージでしょうか?
要するに、竹中平蔵氏と立場の非常に近い人物であり、
小泉構造改革続行の意思表示をしたようにも見えます。
経済財政諮問会議って、何だろうって、場合は、こちらをどうぞ!
≫
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/events/workshop/summary/ws20051031.htm
小泉改革とは何であったのかを知るには良い本かも知れません。
( って、今更遅いか! )
ところでその本ですが、「 今でもちゃんと販売されているのかなぁ?」
( 出版後、間無しですが、そういう分野の著作物は、そもそも普及も
しないかも知れない。) と思って、幾つかのネット書店で検索を
掛けてみました。
見事なまでの素早さでした!
組閣の日の夕食後に検索を掛けたというのに、既に注目の本の欄に、
しっかり取り上げている所まであったり、そうはしないまでも、
著者の肩書きが、もう経済財政担当相に変えられているでは
ありませんか。
恐るべし、民間企業! ・・・ って、利益出さなきゃ食えない
んだから、そんなの当たり前でしょうか?
経済財政諮問会議の戦い
大田 弘子