■ 耐震強度偽造事件 と ゲーム理論 ■
今年、10月11日付のニュースで、
ノーベル経済学賞、ゲーム理論の二氏に
スウェーデン王立科学アカデミーは2005年の
ノーベル経済学賞をヘブライ大教授のロバート・オーマン氏と、
米メリーランド大教授のトーマス・シェリング氏の
二氏に授与すると発表。
両氏は 「 ゲーム理論 」 を確立した代表的な経済学者。
が流れましたよね。
ご記憶の方も多いと思います。
ゲーム理論とは、RPGにおいて、どの種族をどういう配分で
構成したパーティが、最も効率よく成長を遂げるかを、
数学的に計算し ・・・。
・・・ という、お約束の冗談はさて置き、( だったら、書くなよ! )
一般にゲーム理論的状況とは
・ 自らの行動に対して相手がおり、
・ その相手の出方を十分考慮した上で自らの行動を決定し、
・ 自分の行動と相手の行動が相俟って1つの結果を生じる
というもの。
もっと一般的で平易な表現って無いかなぁ?と、考えてみたのですが、
「 駆け引きと、勝ち負けのある、論理学的な確率論 」
だと、思って頂ければ、そうは間違っていないと思います。
複雑怪奇な社会機構の中では、人間の思考や行動にまで、
論理的な雛型に需要が生じるという事でしょうか?
でもまあ、今回、協会の挙げた授賞理由は、
「 ゲーム理論の分析を通じて、対立と協力の理解を深めた功績。 」
だそうです ・・・。
で、そのゲーム理論を少し齧ると、真っ先に登場するパターンが、
「 囚人のジレンマ 」 の2人版。( 進むと、人数が増え複雑化します。)
この記事の一番最後の部分に、最も簡単で、その特徴が見えやすい
2人版のサワリを紹介しておきますが、
それは、興味のある方に後ほど御覧頂くこととして、
先ずは、ここ数日、話題の中心になっている、
「 耐震強度偽造事件 」 の最新情報からどうぞ!
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川崎の住民、買い戻し拒否 売り主や国への批判相次ぐ
2005年11月27日 (日) 22:23
耐震強度偽造問題で偽造が確認されたマンションのある
東京都江東区、川崎市や千葉県船橋市で27日、
マンション住民らによる集会や、周辺住民向けの説明会が開かれ、
売り主や行政の対応を批判する声が相次いだ。
買い戻しに当初難色を示していた売り主のヒューザーの
小嶋進社長が、26日に一転して販売価格の106%での
買い戻しを提案したことをめぐり、
川崎市川崎区の 「 グランドステージ川崎大師 」 の住民は
提案受け入れを拒否することを申し合わせた。
江東区では、「 グランドステージ住吉 」 の住民約120人や都議、
欠陥住宅問題に取り組む建築士らが参加。
住民側対策委員会の八住庸平委員長 (42) は、
「 小嶋社長は買い戻し資金をどう調達するのか説明して欲しい 」
と資金力への懸念を表明。
さらに、「 買い戻し契約の期限から支払日までの間に
ヒューザーが倒産したら、マンションを取られ、
金も受け取れない恐れがある 」 と指摘した。( 共同通信 )
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住民側対策委員会なんていうと、どうしても、急拵え、烏合の衆、
といったイメージが強く、失敗例として、
威張りたいヤツが威張れる場を見付けただけ ・・・ という
悲惨で劣悪なケースまで目にすることもしばしばですが、
ここの会長さんはどうやらしっかりした方のようです。
最後の見解は、誠に御もっとも!
モノがマンションで、あ、そう!と買い直しが出来ないだけに、
お気の毒だとは思うものの、残念ながらこの見解は
当たっていることでしょう。
何度かTVに生出演とやらをした、ヒューザーの小嶋進社長なる人物、
どこからどう見ても実に怪しげ。
マンションの建築・販売と言えば、建設中若しくは、未販売物件を
担保に、新たな建設費を銀行から借り入れて調達。
販売時にその売上げを返済金に回して利益を抜く ・・・ という
サイクルですよね?
それを、一度に全員の販売物件を、転売の可能性が全く無い
今回のような状況下で、買い戻すという台詞!
何処をどう押せば、こんな台詞が出てくるのでしょう?
しかも、買戻し発言の論拠が、これこれこういう資産があるので。
・・・ ではなく、「 男の意地に掛けて、命に代えても! 」 (笑)
だそうです。
106 % だと仰るが、わたしなら、いっそ10.6 % で許して下さいと
言われたいと思う数字です。
ただし、この社長、責任の押し付けや、その場の言い逃れには、
奇妙な行動力を見せる人でもある所が、ちょいと曲者!!
残りの大半の住民の感情を抑えるために、最初に何人かに本当に
買戻しをして見せるかも知れない可能性も、無くはない ・・・。
すると ・・・
・ 抜け駆けして、全額を受け取る。
・ 皆と歩調を合わせて闘い ( 小額ではあろうが ) 最大限を勝ち取る。
・ 抜け駆けして、結局支払われる組に入れて貰えず、仲間に恨まれて
最高に不利とされる個人訴訟で、何もかもパァにする。
・・・ という、究極の選択になりそうです。
ここでのポイントは、最良の結果と、最悪の結果に至る行動が、
共に、「 抜け駆けをする 」 という同じ要素を持ち、
中間の策だけが、「 抜け駆けをしない 」 であること。
・・・ 実は、これが、ノーベル賞を受けるまでに、一つの新しい
経済理論として受け入れられた、「 ゲーム理論 」 の
最も特徴的な守備範囲 ・・・ なんです!!
ああ ・・・、ゲーム理論に脚光が当たる時代って何なの?
って感想も、ついつい持ってしまいました。
もっと詳しくは ( と言っても、結局サワリしか書けませんでしたが )
下記を御覧下さい。
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囚人のジレンマ
―― ゲーム理論の代表的な思考パターン ――
二人は盗難の罪で留置された。
主たる罪状の決定的証拠を掴めないまま、当局は二人を、
軽い罪で、3年の刑とすることにしたのだが、
さらに囚人たちに対して、悩ましい取り引きを持ち掛けた。
「 もし、相棒の罪を証言すれば、相棒を5年の刑とする代わりに、
お前は無罪放免にしてやる。」
良い話ではあるが、それが無条件で提供される程、世の中甘くはない。
「 ただし!!もし、二人とも証言した場合には、
2人とも、4年の刑に処する!」
・・・ と来る。
損得勘定を表にしてみると、
私\相棒 沈黙(協調) 証言(裏切)
沈黙(協調) (私:3年、相:3年) (私:5年、相:0年(無罪))
証言(裏切) (私:0年(無罪)、相:5年) (私:4年、相:4年)
二人は別々に独房に入れられており、相談することが許されない。
そこで、各々が最良の策を求めて考えるわけだが、
「 私が証言して、相棒が黙っておれば、私は無罪だな!
だかその時、相棒も証言していたとすると、私も相棒も、
4年間牢屋に入ることになる。」
「 では、私が黙っていたらどうだろう?
相棒も黙っておれば、2人とも3年の刑で済む。
しかし、相棒が証言しておれば、私は5年の刑、これが最悪か。
私も証言すれば4年で済むのに。」
ということは、相手の行動如何に関わらず、
自分は証言した方が ( 裏切った方が ) 良い結果を得ると
いう事になる。
さて、同じ条件を与えられている相棒も、
きっと同じことを考えるだろう。
その結果は上の図の右下 「 4年の刑 」 である。
双方じっと黙っていれば3年で済んだものが、
頭をひねった挙句に、4年になってしまったのはどうしてだろう?
上の図に従って、正しく行動したはずなのに ・・・?
それでは、やはり沈黙していた方が良いのか?
相手もそうしてくれれば良いが、もし相棒が裏切って証言すれば、
自分は最悪の、5年の刑である。
事前に相談出来るのであれは、「 お互いに黙っていような!」
と取り決めておいて、ふたりとも3年で済ませることも出来るのだが。
( まあ、相談した挙句の果ての裏切り、というのもあるが!)
・・・ てな具合に、これは、
「 あらゆる条件下で、最良の結果を得る 」
ことを目指した選択であるが故、最悪事態を避けたことによって、
成果が一段落ちとなる仕掛けだ。
まぁ、こんな所が、「 ジレンマ 」 と呼ばれる所以でもある訳で ・・・。
 ̄(=∵=) ̄
ともあれ、これを一般的な表にすると、
C:協力(Cooperation)、D:裏切り(Defecrion)
効用の条件:S<P<R<T、2R>S+T
Player1\Player2 | C | D |
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C | (R,R) | (S,T) |
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D | (T,S) | (P,P) |
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S:聖人(=Saint)
P:制裁(=Punishment)
R:報酬(=Reward)
T:誘惑(=Temptation)
「 囚人のジレンマ 」 は、社会問題のカプセルと言われ、
簡単な1枚の表と説明だけで社会科学の本質を表現し得ている、
という点で、その説得力は類例を見い出し難いと思いませんか?
 ̄(=^・^=) ̄